令和4年度9月本議会一般質問 牧一心
○牧一心
新しい風の牧一心です。通告に従って質問させて頂きます。
私は、議員に初当選させて頂いた直後の昨年9月議会、私にとりましては初めての一般質問にヤングケアラーを議題として取り上げました。その後、1年が経ちますが、先月8月1日付、中日新聞の報道によりますと、厚生労働省がヤングケアラーの支援対策強化のために、把握された情報を各自治体の一部門に集約するという新たな枠組みづくりに取り組むとありました。この記事を見て、私は、厚生労働省もやっと具体的に動き出してくれそうな流れに、素直に感謝し、ありがたく思っています。
ところが、ご存知かと思いますが、兵庫県明石市を初め複数の自治体では国のヤングケアラー政策を待たずに、すでに積極的にかつ具体的に取り組んでいます。
今、申し上げました兵庫県明石市長はこのように公言されています。
「全ての子どもたちを、町のみんなで本気で応援すれば、町のみんなが幸せになる。本気で子どもの応援をするんです。そのことがまさに国民みんなのためだということが、大変重要だと思っています」
「子どもを応援すれば、みんな幸せなんです。子どもや子どもの親だけじゃなく、お年を召した方も、幅広いみんなにとって、私たちの社会にとっていいことなんだという発想の転換をぜひお願いしたい。子どもの未来は私たち自身の未来であり、子どもの未来は日本社会の未来だと、本気で考えております」
この明石市のように、市長の考え方を基本として先進的に取り組んでいる自治体と比べますと、率直に申し上げまして、西尾市の支援が行き渡っていない子供たちはかわいそうだと感じます。
本市の場合、合併以降のPFI問題で、市長も大変な苦労をされて来られたことは分かりますが、PFI問題が大変であろうと無かろうと、ヤングケアラーに該当する子供たちにとっての緊急の課題は、早く行政が手を差し伸べるべきことであると思います。
私が、特に重大な問題だと感じる所は、ヤングケアラーに該当している環境の子供たち自身が、自らがヤングケアラーであることに気がついていないということです。
この議場にご出席している市長初め管理職の皆さん、そして議員の皆さんたちにはほとんど、このような生活環境に関係の無い方たちばかりであると推測しますが、ご存知のとおり、ヤングケアラーに該当する子供たちは、児童から生徒、生徒から成人に至る過程において、普通の環境で生きている子どもたちと比較すると、一生を左右しかねない大きなハンディがあります。
くどいかもしれませんが、このことに当事者が気づいていないことにも問題があると思います。なぜならば、行政として、このような環境にある子供たちの具体的な訴えがあれば放っておくことはなかったはずだからです。ヤングケアラーの子供たちが気づいていないならそれはそれでいいじゃないかという考え方もあるかもしれません。
しかし私は、明石市長が公言してみえるとおり、子どもは宝だという基本的な信念に基づいて、それぞれの子供たちの生活環境を改めることで、子どもにハンディの無いようにするという考え方に共感します。
ヤングケアラーに該当する子どもたちにとって、どのような対応がベストであるのかということは、私にも一面的なことでないことは承知していますので、とにかく行政として取り組むべき第一歩は、ヤングケアラーの子供たちの環境を改善するという思いで臨んでいただくほかはないものと考えます。
そして、試行錯誤を繰り返しながら子供たちにとってベストな道を模索していただくことしかないのかなと思います。
そこで議題である「ヤングケアラー支援体制の確立に向けて」ですが、国がヤングケアラーに対する具体的な支援策を打ち出し、やっと重い腰を挙げてくれそうだと、若干批判的ながらも私としては歓迎している立場から質問に入らせていただきます。
質問要旨1「本市としての対応について」お尋ねします。
「厚生労働省が ヤングケアラーに対する具体的な支援策を打ち出しましたが、本市としては国の指導を待って実施するという考えなのでしょうか?
○子ども部 家庭児童支援課
厚生労働省は本年4月からヤングケアラー支援体制強化事業を開始し、都道府県や市町村の取り組みを支援しております。愛知県は、当該事業を活用し、県内各地で「ヤングケアラー支援関係機関研修会」を開催することとしており、本市としても関係か職員が参加し、ヤングケアラー支援のためのスキルアップを図り、適切な支援につなげて参りたいと考えております。
○牧一心
学校などで把握されたケアラーの情報は、各自治体の一部門に集約することが示されています。質問イとしまして「本市のヤングケアラーについて、家庭児童支援課が窓口になるとのことですが、どういった役割を担うのか」ご説明願います。
○子ども部家庭児童支援課
家庭児童支援課の役割としましては、ヤングケアラー本人等からの相談を直接受け付ける相談窓口としての機能や、相談を受け適切な支援機関につなげる機能を担うものと考えております。また、既存の公共サービスが受けられない場合に対応するため、ヤングケアラーのための訪問による生活支援事業の実施を検討して参ります。
○牧一心
子ども部家庭児童支援課が情報の集約先になるというふうに理解しました。ここが教育委員会との役割でそれぞれの担う部分が異なってくるところだと思いますが、のちほど教育委員会へ質問をさせていただきますが、まず、再質問としまして「相談窓口としての機能を担うとのことですが、周知についてはどのように行いますか?
○子ども部家庭児童支援課
相談窓口の周知につきましては、今後、市ホームページや学校等の関係機関を通じ、行って参ります。
○牧一心
続いてウとしまして「愛知県が本年ヤングケアラーの調査を行い、各市町村にデータのフィードバックをするとのことでしたが、どのような報告があったのか」お尋ねします。
○子ども部家庭児童支援課
愛知県が昨年実施しました「ヤングケアラー実態調査」の調査結果が本年3月末に公表され、希望する市町村に対し、当該市町村分の調査結果データが提供されました。本誌においても提供を受けておりますが、県からは、データ数が少ないため市町村単位の統計分析を行っていないことと、各市町村が県からデータ提供を受けて、統計分析を行う場合は、施策検討の参考ととどめるよう通知されております。
○牧一心
概ね、昨年に厚生労働省がまとめた数値と近いものになっています。「世話をしている家族がいる」と答えた小学生は6人に1人。中学生では9人に1人。高校生では14人に1人。ここが支援者の立場に立つ時に意識を共有しておかなければいけない点だと思います。これらの子どもたち全員が問題なのではありません。ヤングケアラーの2割以上が、「自分の時間が取れない」「勉強の時間が取れない」など、家族を世話することにより生活に支障が生じている。この子ども達に対しての支援が必要だということを承知して下さっているのでしょうか。続いて質問要旨2に入ります。アといたしまして「本市は、ヤングケアラーについて、いつごろから関心を持つようになりましたか。また、これまでどのように対応してきましたか」お尋ねします。
○子ども部家庭児童支援課
ヤングケアラーにつきましては、厚生労働省と文部科学省が令和2年に初めての実態調査を実施、令和3年4月に調査結果を公表しており、本市といたしましても、この頃から大きな関心を持つようになったと認識しております。 また、これまでの対応としましては、厚生労働省や文部科学省が設置する相談専用ダイヤルについての周知や、ヤングケアラー普及啓発活動として、厚生労働省が作成したポスターとリーフレットを市内小中学校や高等学校を始めとする関係機関・施設に配布するとともに、愛知県が開催した「ヤングケアラー理解促進シンポジウム」に参加するなどし、 他自治体における先進的な取り組みの情報収集等を行っております。
○牧一心
イの質問といたしまして「令和3年12月定例会での一般質問では、他部局との連携が課題であるとの答弁でしたが、ヤングケアラーについて、関係課で情報共有はしてみえるのか。また、これまで関係課で何度協議が行われてきましたか。
○子ども部家庭児童支援課
ヤングケアラー支援についての情報は、愛知県から主に家庭児童支援課に届くため、必要な情報は関係者と共有しております。最近では「ヤングケアラー支援関係機関研修会」に関する県からの開催案内を、学校教育課、福祉課及び長寿化と情報共有して、各家職員が日程を調整し参加する予定をしております。 また、関係者間での協議はそれぞれに行っている状況で、関係課一同が参集した形式での協議については、現在まで行っておりませんが、今後の関係機関研修会での内容も踏まえて、協議の場を作ってまいりたいと考えております。
○牧一心
質問要旨3に移ります。こちらでは教育委員会の支援体制についてご説明願います。アでは「ヤングケアラーの対象と判断できる児童・生徒は、令和3年度末時点において何人ぐらいいたのかか」お尋ねします。
○教育委員会事務局学校教育課
教育委員会としては、ヤングケアラーの問題はネグレクト等の児童虐待の1つであると捉えており、児童生徒を対象としたアンケートを実施する考えはありません。よって人数は把握しておりません。また、問題を抱える児童生徒について関係機関で話し合う定例サポート会議や、各学校が必要に応じて開催しているケース会議において、令和3年度末の時点で、ヤングキャラの対象と判断できる事例は報告されておりません。
牧一心
再質問します。定例サポート会議及びケース会議の参加者、開催回数はどのでしょうか?
○教育委員会事務局学校教育課
定例サポート会議の参加者は、西三河福祉相談センター、保健所、市民病院、警察、健康日、保育課、福祉課、家庭児童支援課、教育委員会の各職員及び主任児童委員、家庭児童相談員です。月に1回、定期的に開催しています。 ケース会議の参加者は、学校の教職員が中心で、必要に応じてスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、生徒指導アドバイザー等が参加します。回数は不定期で、問題行動や不登校等が心配される児童生徒の状況に応じて開催しています。
○牧一心
続いてイの質問に移ります。「不登校の児童・生徒もヤングケアラーになっているとの報告もあるが、それに対する調査は考えているかどうか」お尋ねします。
○教育委員会事務局学校教育課
不登校児童生徒については、担任による家庭訪問や電話連絡、スクールカウンセラーとの面談等で、生活状況や問題行動、不登校の背景等の把握に努めており、ヤングケアラーについても、こうした取り組みを通して把握すべきものと考えております。そのため、教育委員会としては不登校児童生徒を対象としたヤングケアラー調査は考えておりません。
○牧一心
再質問します。今後、教育委員会が取り組んでいくことは何か、ご説明願います。
○教育委員会事務局学校教育課
先ほども申し上げましたが、教育委員会としては、ヤングケアラーの問題をネグレクト等の1つであると考えており、こうした問題を発見するために、各学校で定期的に実施している生活アンケートや面談、学校生活の様子の観察により児童生徒の状況の把握に努めます。また、問題を発見するためには、児童生徒の言葉遣いや表情、服装等の小さな変化に気づくことが大切です。児童生徒理解に関する研修で教職員の 力量向上を図るとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用にも力を入れていきます。
○牧一心
続いて質問要旨4では健康福祉部の支援についてお尋ねします。アといたしまして「中日新聞の記事によると、ヤングケアラーの子どもには状況に応じて、 生活困窮、障害福祉、介護、精神保健など必要な手当てをしているとありますが、本市にはどのような事例があり、どのような手当てをしてみえるのか?」お尋ねします。
○健康福祉部 福祉課長寿課
健康福祉部としては、直接ヤングケアラーの状況把握しているわけではなく、ヤングキャラを生み出す背景となる貧困や介護の問題等について、個別に支援することになります。対象となるケースについては、家庭児童支援課が主催するサポート会議を通して、あるいは、地域包括支援センターや相談支援事業所、生活困窮者自立支援の窓口等の関わりを入り口に、 そこで把握した心配な家庭の状況について、間経過及び関係機関の連携のもとで情報共有を図り、必要な対応を協議していくことになると考えております。
これまでに具体的な事例はほとんどありませんが、事例の1つとして、障害児の相談支援事業所から、母子家庭で、知的障害児をその兄弟が世話をしているケースの情報提供がありました。家庭児童支援課が主となって関係機関によるケース検討会議を行い、介護負担を軽減する福祉サービスを支給するとともに、学校、相談支援事業所、サービス提供事業所等が連携し、養育状況を見守っていくこととなりました。
なお、長寿課では、地域の医療・介護関係者などが情報共有できるサイトを開設しております。そこに厚生労働省が設置するヤングケアラーの相談窓口についての情報チラシを掲載し周知を図っており、その見識を持って対象者との関わりもできていくものと期待しております。
○牧一心
続いてイの質問といたしまして「 民生委員・児童委員等との連携をどのように考えみえるか」お尋ねします。
○健康福祉部 福祉課
民生委員・児童委員との連携については、要保護児童対策地域協議会のもとで、対象児童のいる世帯への対応を協議するサポート会議に主任児童委員の代表や福祉課、健康課職員も参画しており、関係機関の情報共有や連携して支援する体制を整えております。また、民生委員は、ヤングケアラーの問題に限らず高齢者の単身世帯や朗々世帯、障害者世帯や母子世帯など、様々な家庭環境に関わり、相談に応じるとともに、それぞれの状況に応じた適切な支援が行われるよう、行政とのパイプ役を担っております。「地域の見守り役」ともいえる民生委員は、毎月理事会を開催しており、そこで様々な意見交換や、からは新制度に関する情報提供を行っているところです。ヤングケアラーの問題についても、まずは委員にその認識を深めていただくことが必要であり、チラシ等の配布により周知を図るとともに、必要に応じて、委員が把握した個別ケースの相談も伺っていきたいと考えています。
○牧一心
質問要旨5に移ります。アといたしまして「 すでに、ヤングケアラー条例を指定している自治体があります。本市としての考えはどのようですか?」
○子ども部家庭児童支援課
ケアラー支援条例につきましては、令和2年3月に埼玉県が全国で初めて制定し、ケアラー支援に関する基本理念、自治体の責務や住民・事業者・関係機関等の役割、支援に関する基本事項を定め、ケアラー支援が総合的かつ計画的に推進され、ケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現を条例制定の目的として示しており、その後いくつかの自治体が同様の条例を制定している状況であります。愛知県内においては、県及び各市町村が未制定の状況でありますが、条例制定の意義はあるものと考えておりますので、今後、県の条例制定に関わる動きや考え方に従いながら、本市の条例制定について、検討してまいりたいと考えております。
○牧一心
イといたしまして「 厚生労働省は「子育て世代包括支援センター業務」の取り組みを行う自治体に対する予算を計上しています。内容はこちらです(パネルを出す)【ヤングケアラー支援体制強化事業】で自治体に対し財政支援策を出しています。本市で検討している事業はありますか?
○健康福祉部 福祉課
子育て世代包括支援センターは平成30年10月に設置し、母子保健型の相談機関として妊娠期から 就学前の子供とその保護者の相談を受け、必要に応じて医療機関や関係機関と連携しながら見守りや支援を行っています。母子保健型の相談機関としての機能は十分に果たしているため、現時点では新たに検討している事業はございません。
○牧一心
再質問します。子育て世代包括支援センターで子供を含む家族の問題を把握した際に、どのような支援をしていますか?
○健康福祉部 福祉課
子供の問題はその子自身の個体の問題もありますが、家庭に問題が潜んでいることも少なくありません。問題が多岐にわたる場合には、健康課だけでは問題解決ができないため、必要に応じて関係機関が集まる西尾市要保護児童対策地域協議会の中の実務者会議において情報共有や支援の方向性を検討しています。
○牧一心
再質問します。厚生労働省はヤングケアラー支援体制として、その過程の状況に応じた適切なサービスにつなぐ役割を果たす「ヤングケアラー・コーディネーター」の配置を推奨していますが、本市の考えはいかがでしょうか?
○子ども部家庭児童支援課
厚生労働省は、ヤングケアラー支援体制構築のモデルとして、ヤングケアラー・コーディネーターの配置を示しており、社会福祉士、精神保健福祉士や公認心理士等の資格を有する者等をその要件としています。本市におきましては、家庭児童支援課において、各種の児童相談や虐待リスクのある家庭の支援を行っており、国がコーディネーターに求める資格を有する職員も 複数在籍している状況であります。ヤングケアラー・コーディネーターにつきましては、現在のところ新たに配置する考えはありませんが、現場の児童相談や支援体制の中でヤングケアラー支援につきましても、対応して参りたいと考えております。
○牧一心
ウといたしまして「 外国人世帯に対して、ヤングケアラーの認知度を高めるために取り組んでいる事はありますか?」
○子ども部家庭児童支援課
ヤングケアラーの認知度を高めるため、外国人世帯に特化した取り組みについては、現在行っておりませんが、「ヤングケアラー」と言う存在について広く知ってもらうことや、「ヤングケアラー」とその家族について正しい理解につながる啓発活動は必要であると考えていますので、外国人世帯も含めた啓発活動を引き続き行って参ります。
ヤングケアラーの当事者に会ってきました。サントスさんという方です。23歳で両親がブラジル人です。僕と同じく、3歳の時に西尾市に来ました。もちろん僕と同じように日本語も使えます。彼の両親は早いうちに離婚をして母子家庭で育ちました。勉強家であった彼は名古屋の大学に受験をして合格することができました。ところが、入学金の支払い期日であった直前に母親が失踪してしまいました。2年後にサントスさんには連絡が来たそうです。彼は進学を諦めて、製造業の仕事について、今現在、前向きに頑張っています。もしその入学費の60万円を市で立て替えをすることができたらと、立て替え制度が西尾市にできるのかどうか分かりませんが、進学を望んだ彼に、支援の手を差し伸べることができたのでは、と思わずにはいられません。
結局何が原因だったのか? サントスさんの母親はメンタル面に問題があったと考えられます。というのも、日本語が使えないサントスさんの母親は子どもが家を出かけることを嫌がり、「話を聞いてほしい」と自分の側から離れないようにしていました。つまり、話し相手が息子しかいませんでした。これもケアラーの1つの事例です。もしかしたらサントスさんに自由時間があれば、アルバイトに行く時間もできて、お金を貯めて、進学もできたかもしれません。ともかく、まちとして全力で教育と子育てを応援するのであれば、彼のような事例を救うことができたのでは、と思います。
以上で一般質問を終わります。